慶應SFC両学部総代が語る「下村先生の使い方」Part1/授業編

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慶応大学SFC(湘南藤沢キャンパス)を構成する3学部のうち2つで、2015年度の卒業生・総代として証書を受け取った2人の学生が、卒業直後にトップ対談。「下村先生の使い方」について、授業・課外活動・人物像という3つの視座から語り合った。

今年度の下村の授業を履修するかどうか、判断材料を探している諸君に、ご参考まで。

◆初めて受講したとき

下村:相川は、僕がSFCに着任した2013年度の、最初の授業(春学期『科学技術とジャーナリズム』)をとったんだよね。

相川美菜子[環境情報学部・2015年度卒業生総代]:はい。私はその前に、(下村が内閣審議官だった頃)首相官邸のプロジェクト〔Part2参照〕で御一緒してたんですけど、その頃って少人数を相手に、濃いアドバイスをしていただけたじゃないですか。それが授業でいきなり大人数になっても、学生1人1人に向ける熱量の割き方が変わっていないな、と驚きました。一方的な授業にせず、マイクを学生に持たせて、1人1人の意見を皆に共有しようとか、一体感を作ろうという事をすごいされているなと。

下村:山崎は、その年度の後半(秋学期『マスコミュニケーション』)からだよね。

山崎聡一郎[総合政策学部・2015年度卒業生総代]:シラバスの中でこの授業を見つけて、面白そうだから1回取ってみようと思って。金曜日には、他の授業無かったんですけどね。

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下村:そうそう! 何週目かの授業が終わった時に、つかつかっと教壇の所に来て、「僕、埼玉から片道2時間40分掛けてこの授業1コマの為に来ていますんで、宜しくお願いします。」って言われてさ。あれは凄いプレッシャーだった。(笑)

◆実社会を教室に持ち込む

山崎:結局、2年の秋(単位取得)と4年の秋(聴講)と、『マスコミュニケーション』2回取りましたけど、内容が全然違いましたね。授業内容がアカデミックから離れて、先生の経験に沿っている話だったので、そこが凄い面白いなと思って。物凄く生々しい話が聞けるぞって。そういうことは、他の授業では無いので。

相川:カリキュラムに沿わないで、生のネタをどんどん入れてくるから、ほんとに同じ授業は次の年には絶対にできないっていうか。“ナマ感”がすごい良かったですね。SMAPの事とかもバンバン出るような、そういう時事性が本当に新鮮だったし。

下村:それが、専任教授ではない、特別招聘教授の役割分担だと思うんだよね。招聘されて来ている以上は、大学の外の実社会をダイレクトに教室に持ち込まないと。だけど、「ちゃんとシラバスに沿ってやってくれよ」と思う事はなかった?

相川:基本的には、シラバスも押さえてるじゃないですか。その説明の事例としてどういう材料を使うかっていう部分の変化だったんで、そんなにマイナスには感じませんでした。
特に、ゲストスピーカーの話の充実ですね。枝野元官房長官を教室に招いて、「原発事故直後、『ただちに影響はありません』以外の表現方法は有り得なかっただろうか」を皆で議論したりとか。秋の『マスコミュニケーション』でも、世田谷一家殺害事件ご遺族の入江杏さんがいらしてのお話とか、凄い衝撃的で、そういう方達の話を生で聞けたっていうのが、本当に印象に残ってます。
あと授業で印象的だったのは、グループワーク。《難しい科学技術の話を、どうやって世間の人々に伝えるか》、実際に何かを伝えてみろという課題で。私たちのチームは、太陽光エネルギーについて正しい認知度を上げるために、「太陽光パネルを買う/買わない」を最初の選択肢にする人生ゲームを作成しました。

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下村:あのアイデアには、感心したよ。

◆アウトプットとフィードバック

山崎:僕は1人で「授業でこれをプレゼンしたい」って言って、アウトプットさせて貰ったことが結構多かったので、それが学びになりましたね。インプットを学ぶ授業の方がアカデミックかもしれないけど、極論すれば、それは下村先生の著書(『マスコミは何を伝えないか』・『10代からの情報キャッチボール入門』/いずれも岩波書店)を読めばいい。でも、本読んで「なるほど、そうなんだ」って思った事を実際に活かすとなると、自分にはどこが活かせてて、どこが活かせていないかが分からないから、“ぶつかり稽古”で下村先生から受けるダメ出しが一番糧になるっていう。
特に印象深いのは、去年『科学技術とジャーナリズム』でやった、ウルトラセブンの発表(被爆者差別だと問題視されて欠番になった“幻”の「ひばく星人」登場回の分析)と、『マスコミュニケーション』でやった、テロ直後のパリに行った現地報告ですね。

相川:私も、アウトプットに関しては今まで下村先生から散々フィードバックをいただいて学んできました。もう先生、フィードバックのレベルやばいじゃないですか。

山崎:ネタ尽きないよね。

相川:ネタ尽きないし、話長すぎない!?ってくらいもう、1つの発表に対しての返しが…普通なら「10分プレゼンしたら3分フィードバック」ぐらいなのに、「10分に対して10分」みたいなボリュームじゃないですか。私が1質問したものが100で返って来るんで、もう質問の仕方とかどうしよう、適当に安易に質問できない!みたいな。下村先生にメール送る時も、まじで緊張していたんですよ、昔。(笑)
そこで、ほんとに良い点・悪い点いろんな指摘をいただいたりとか、「こういうのと組み合わせたらいいよ」「こうやったらもっと面白くなる」みたいな、すごい補足情報をいっぱい頂けて。「あ~私、まだまだこういう考えが足りなかったな」「あ~こういう風に繋げられるんだ」って、《自分のアウトプットの質をもっと高める事の必要さ》をとても考えさせられました。

山崎:アウトプットもできるようになったけど、あと下村先生の授業受けたことで、インプットの考え方もかなり変わったっていうのはあります。《もうニュースをウ飲みにしなくなった》ってことですね。

◆教室から実社会に持ち出す

下村:2人ともめでたく今回、それぞれの学部を首席で卒業できたみたいだけど、それは大学時代の話だよね。これからの人生にとっては、下村から得たものは、何か意味はあったかな?

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相川:実際、それは生きてます。下村先生って、1つ1つのアウトプットがほんとに丁寧じゃないですか。メール1つにせよ、キーワードとか太文字で赤くしてとか、そういう工夫がすごく細かくて、いろんな所にそれが現れてて。そんな《伝えるための細やかな気遣い》がとても勉強になりました。私、ビジネスメールなんかも書き方がいいねって褒めていただけるんですけど、それ全部先生から教わったことなので。

下村:びっくり。メールの中身じゃなくて、そういうスタイルに学びがあったんだ!

相川:色文字は、さすがにビジネスメールじゃ使えないですけど。(笑)

山崎:僕が授業中に皆の前でプレゼンをした内容を、先生が咀嚼してその場でもう1回皆に言うじゃないですか。それを聞きながら、「そうそう、僕はそれが言いたかったんだよなぁ」って思うわけですよ。それが1番学びになるっていうか。だから僕の場合は、先生が実演される《伝え方》っていうのを目の当たりにして、良いお手本を間近に見られたって言う感じでしたね。

下村:あ~それは確かに、昔テレビ番組に出てた頃も、時々言われたな。スタジオの討論で浅野史郎さん(元・宮城県知事)の発言を聴きながら、その要旨をヒョイとその場でボードに書いたら、それを見て「あ、そうそう、そういう事です」って、ご本人がまだ語り終わらないうちに喋るのをやめちゃった事とかあった。(笑) 《日本語を日本語に翻訳し直して示す》技法が山崎に盗まれていたわけだな、授業中に。いいねェ、どんどんこれから実社会で活用して!

Part2【課外活動編】
Part3【人物編】に続く

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