スマホで動画リポート、あなたも発信しませんか 毎日女性会議・第6期スタート

ゲストの安田菜津紀さんを挟んで、レギュラー講師の堀潤・元NHKアナ(現「8bit News」主宰)&私。前列は、見学の慶応大SFCの学生達。
ゲストの安田菜津紀さんを挟んで、レギュラー講師の堀潤・元NHKアナ(現「8bit News」主宰)&私。前列は、見学の慶応大SFCの学生達。

毎月1回・半年入れ替え制の「毎日女性会議」も、今日から第6期に入った。これまで2年半、いろんなテーマを携えたレディー達がやってきて、うんうん言いながらもスマホで動画作品を完成させていった。

抗がん剤による脱毛の悩みなどを出発点に、女性のがん患者向けビューティサロンを自ら開設し、それを告知する動画を作りに来た、がん当事者さん。キラキラ弁当ブームに疲れ、栄養があって我が子が喜んでくれればそれでいいじゃん、と言う考えをご自身の赤ちゃんとの共演で描いた若いママ。自分たちがどのように聞こえているかを一般人に体感してもらう斬新な動画を完成させた、感音性難聴の患者さん。“バリキャリ”(バリバリのキャリア)じゃなきゃだめなの?と、昨今の「女性活躍」ブームの中身にインタビュー・メドレーで疑問を投げかけてみせた現役社会人。———テーマは、実に多彩だ。

先月完成上映会があったばかりの第5期の「チャレンジ賞」受賞作は、80代後半になった今でも自動車運転を続ける男性(制作仲間の祖父)の言い分や、高齢ドライバーの車にはねられて亡くなった女子高生のご遺族(知り合い)へのスマホでのインタビューを合わせた問題提起作。まさに、つい一昨日横浜で小学1年生が犠牲になった事故に、一足先に警鐘を鳴らすような作品だった。

一本松は希望か? シリアの美しさを見たか?

今日のゲスト講師は、フォトジャーナリストの安田菜津紀さん。これから映像制作をしていく受講生たちに彼女がまず“戒め”の教材としてスクーリンで見せてくれた写真は、おなじみの1枚だった。安田さんの夫の郷里・陸前高田の、あの有名な1本松。東日本大震災直後の2011年3月、夕景の中に凛として立つ姿を「希望の象徴」として撮影した安田さんだったが、妻を亡くした被災者である義父に、「津波の破壊力の象徴だ」と叱られてしまったという。

「1本が残った」と見るか、「7万本が失われた」からこの光景がある、と見るか。自分のメッセージは、受け手の気持ちの多様さを深く理解していない、一人よがりなものになっていないか―――発信者としての自戒の難しさ、大切さを物語る、何度聞いても象徴的なエピソードだ。

会議の様子

次に見せてくれた写真は、戦闘が始まる前に訪れた平和なシリアの街並み。山から見渡す家々のそれはそれは美しい光景に、受講者は皆、息を呑んだ。ニュースは《非日常》を伝えるものだから、その前に本来存在した《日常》の姿は、なかなか伝わってこない。だから、視聴者や読者は“自分たちとは全く別世界の、混乱や悲嘆の街”というイメージしか抱けず、元々そこにあった《何が失われたのか》に思いが及ばない。

この写真を見せてもらいながら私は、原爆投下1秒前までの広島の街並みを精密なCGで再現した、被爆者で映像作家の田辺雅章さんの取り組みを思い出した。《あの時、何が失われたのか》がリアルになると、私たちは今暮らす自分たちの街でも《将来、何が失われるのか》という可能性の想像に、ようやくスイッチが入るようになるのだ。

医師とカメラマン、写真と動画———それぞれの役割分担

戦場に通う安田さんの写真に写る笑顔の子供たちの中には、次に訪れた時にもうこの世にいない子も稀ではない。目の前で負傷した子供たちの命を救おうと奮闘する医師やNGOの人たちに比べて、写真を撮るだけの私は何の役に立っているんだろうか―――という、多くのフォトジャーナリストが直面する迷い。安田さんはそれに苛まれる時に、「役割分担」という言葉で自分の背中を押しているという。

その通りだ、と私も思う。医師は、今《目の前の不幸》を取り除く為に動き、ジャーナリストは、現在の問題を皆に知らせ共有することで《将来の不幸》を取り除く為に動いているのだから。

最後の質疑応答で、私は敢えて安田さんに問いかけた。「写真は動画と、役割がどう違うんでしょう?」

彼女は、一瞬でメッセージを伝える《写真》は、受け手がそれぞれに想像力を広げていく「入口」の様なものだと思う、と答えた。なるほど。その入口の向こうに広がる日常を、毎日女性会議に集う受講生たちの様な、市井の人々が撮る動画が描く。いわば《動画》はリビングルームで、《写真》はその部屋に入るドアだったりもするのかな…と私がつぶやき、皆でウ〜ムと考えた。

動画でものを伝えるって、何なんだろう。そんなことを頭の片隅で思索しながら、6期生たちは今日から、スマホ片手に半年間の制作に体当たりしてゆく。

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書いた人 下村健一 22 Articles
TBS報道局アナ(スペースJ、等)を15年務めた後、フリーキャスター(筑紫哲也NEWS23、サタデーずばッと、等)10年。その後、内閣審議官(2年任期満了後は民間契約アドバイザー)として計約900日、民主・自民の3政権で政府の情報発信に従事。現在は慶應義塾大学、関西大学、白鴎大学で教鞭をとる他、小学教科書の執筆など、幅広い年代の子ども達の教育に携わる。世間の難しいコミュニケーションを橋渡しする《コミュニケーター》として働くことがモットー。