日本大学アメリカンフットボール部の選手による悪質な反則タックルについて、選手本人が昨日記者会見しました。
その会見の約1時間【前】に、下村が連続投稿したTwitterをまとめ再掲します。
会見が終わった【後】で読んでもあまり意味はなさそうですが、実は下村は「今後の様々な事件の当事者会見に当てはまる一般化した書き方」(特に②)を意識しているので、今後のために載せておきます。(スタッフ坂本)
※ ※ ※
日大 タックル 学生会見を見る前に
①既に精神的動揺を抱えている若者が、フラッシュの嵐と無数のレンズの凝視、銃口のようなマイクの先端を自分に向けられる。その異常さをリアルに想像し、彼の言動が仮に首をかしげるものであっても、それが彼の《普段》の人格の反映だとは即断しないこと。
②なぜ自ら会見など開くんだ?と疑問を感じる人へ⇒ 一般人が会見を開く理由のほとんどは、「何か言いたいから」ではない。「押し寄せる報道陣に個別対応してたら生活が成り立たないので、1回にまとめたいから」やむなく会見するのだ。まず、そこに理解を。
③「けしからんヤツ」とも「気の毒なヤツ」とも、一切の先入観を持たずに傾聴を。「監督の指示通りやった」と証言しても、「監督の指示を拡大解釈してしまった」と懺悔しても、何を聞いても「ついに真相判明!」と即断しないこと。これは、正解発表会に非ず。
④「この後いよいよ真相が明らかに」とか「どんな事実が明かされるのか」とかのキャスターやリポーターの言葉に惑わされないこと。この会見でわかるのは「真相」「事実」ではまだなく、「解明への有力な一材料」。伝え手が熱狂する時ほど、受け手は冷静に。
日大 タックル 学生会見に出席する記者さんへ
[1] 今日の主役学生は、既にタックル実行直後から泣いていたと言われるほど、精神的に動揺している。客観性のある証言を彼から引き出したかったら、なんとか彼の緊張をほぐす努力を。普段より穏やかな口調で、柔らかい表情で、ゆっくり質問する、等。
[2] 自分は断罪者ではなく、単なる質問者であることを忘れずに。失敗者から情報を得る時は、《土下座してでも教訓を教えてもらう》のが社会の為。会見で会長を吊し上げ、ついにご本人の自殺という結末に至った浅田農産事件の反省を、今こそ思い出せ!
<浅田農産事件とは>
※鳥インフルエンザに見る、無防備で正直な会見の失敗(『広報会議』2013年10月号)
<同事件当時の下村発信アーカイブ>
※鳥インフルエンザの浅田農産会見を敢えて評価する(下村・旧公式サイト 2004.3.3)
※浅田農産会長の自殺と、メディアの自殺(下村・旧公式サイト 2004.3.9)
※浅田農産会長自殺で、報道批判の声続々 (TBSラジオ『下村健一の眼のツケドコロ』2004.3.13)
※浅田農産会長の自殺は防げなかったのか(『マル激トーク・オン・ディマンド』2004.3.15)
下村健(一@ken1shimomura )さんによる、日大アメフット部の学生会見についての一連のツィート。本件に関心がない人も、ある社会的な出来事があった時の、当事者による意見の開陳を見る側・取材して報じる側のそれぞれが留意することが要領よくまとめられていると思う。
— 酔仙亭響人 (@suisenteikyohji) May 22, 2018
ありがとうございます。まさに、そのつもりで書きました。会見後に書くと結果論だと思われてしまうので、《結果がどうであろうと》事前に持つべき心構えとして。
真相究明は、日大サイドと何がどう食い違ってるかがでてきてこれから、というとこでしょうが、「謝罪を前提とした会見」として、言えることほぼ全部だしたうえで尚、自分のプレーの過ち、責任はきえない、と改めて明確に謝罪もして、彼の立場としては最大限の対応だったとおもいました。
— みっき (@ryouann) May 22, 2018
同感。それでも切り取って歪める人、過剰反応する人は出るでしょうが、でもそうした不毛なリアクションを最も少なく抑えられる、(今の彼の立場で行い得る)ベストな会見だったと思います。
●以上のツイートを見た朝日新聞から取材が来て、今朝の社会面トップの同会見を報じる記事中に、下村の以下コメントが掲載されました。
「若者矢面 日大反省を」
会見は、日本記者クラブ内で代理人弁護士が同席して開かれた。同クラブは通常、弁護士の同席を認めないが、今回は選手が20歳になったばかりの学生で、今後の責任問題を考慮して認めたという。同クラブは「今回だけの特例」とした。
元TBSキャスターで会見取材の経験が多い下村健一・白鴎大客員教授(57)は「問題の当事者として動揺する若者を矢面に立たせたことを、日大は教育機関として反省してほしい。もっと早く問題の全貌を発表していれば、向かい風に学生一人で立ち向かわせることにはならなかった」と話した。